1972年/アメリカ/監督:サム・ペキンパー/出演:スティーブ・マックイーン、アリ・マッグロー、ベン・ジョンソン、サリー・ストラザース、アル・レッティエリ、スリム・ピケンズ
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ハリウッド屈指の大スター“男が憧れ惚れる男”スティーブ・マックイーンと、スローモーションをふんだんに使った残酷なまでの暴力描写で知られる“血まみれのサム ”ことサム・ペキンパー監督がタッグを組んだら、こんな映画ができました。
淡々として抑揚の少ないクライム・ロード・ムービーだけど同時代に隆盛を極めていたアメリカン・ニューシネマとは似て非なる仕上がりで好ましい。
参考 アメリカン・ニューシネマ=1960年代後半から1970年代頃までにハリウッドで製作された、主に主人公の壮絶な死によって幕を閉じる反体制的な若者を中心とした作品群
主演のスティーブ・マックイーンとアリ・マッグローが結婚するきっかけを作った映画、【ゲッタウェイ(1972)】です。
1994年にはアレック・ボールドウィンとキム・ベイシンガー主演でリメイクされています(【ゲッタウェイ(1994)】)。
映画【ゲッタウェイ(1972)】のあらすじザックリ
驚きのラストが待っている強盗夫婦の逃亡劇
刑務所に服役中のチンピラ、ドク・マッコイ(スティーブ・マックイーン)は、規律でがんじがらめにされ娯楽皆無の刑務所生活(当たり前)に人格が変わってしまうほどの嫌悪感をおぼえていました。
そしてついに、ドクは面会に訪れた妻のキャロル(アリ・マッグロー)に危ない橋を渡らせる強硬策に出るのです。
「ベニヨン(ベン・ジョンソン)に頼んで俺をここから出してもらってくれ」
ベニヨンってのは悪党だけど地元財界に顔の利く権力者。
ドクを出所させるため裏で手を回す代わりにベニヨンが出してきた条件は、とある町の小さな銀行を襲撃して現金を強奪してくること。
協力者として許されたのは妻のキャロル、それにベニヨンが用意した見るからに頭の弱そうな男2人。
まあ仮にこの2人がアホであろうとなかろうと、ドクはこの話を引き受けた時点から「自分とキャロルの2人で大丈夫」ってちゃんと言うてたんですけどね。そこは長い間チンピラやってたドクの勘が働いたんでしょう。“仕事”する時「組んで良い奴」「組んだらあかん奴」みたいなね。
ドクの悪い予感は見事的中。
ベニヨンが無理矢理同行させたこの2人のせいで銀行強盗計画はケチョンケチョン。
それでもなんとか銀行から現金を持ち出すことに成功したドクとキャロルでしたが、アホ2人のチョンボのせいで今度はドクだけでなくキャロルまでもが、夫婦そろって追われる羽目になってしまったのでした。
ゴミ収集車で圧縮されても幸せなんです私たち
しかもマッコイ夫婦を追ってくるのは銀行強盗犯を追う警察だけではありません。
銀行強盗をさせたベニヨンの本当の思惑(実は強盗に入った銀行の頭取はベニヨンの弟で、横領金をうやむやにするために襲わせた)を知ったドクとキャロルは、ベニヨンを銃殺してしまいます。
これによってベニヨンの弟とその一味が報復のために二人を追ってくる。
さらには強奪金をすべて持って逃げているため、一緒に強盗に入ったアホ2人のうちの顔の濃い方(=ルディ)(アル・レッティエリ)が追ってくる。
マッコイ夫婦は2人の力だけで国家権力(警察)・ベニヨン一味・ルディの三者の網の目をくぐってメキシコへ逃亡しなけりゃならないってわけでして、そりゃあもう壮絶ですよ。
一度なんか逃げてるうちにゴミ収集車に入ってしまいますから。
運転席ちゃうよ、うしろうしろ、ゴミん中。
しかも回収中のゴミ収集車の荷台に入っちゃったもんだから、あとからあとからゴミがほりこまれてくる。
荷台にゴミがほりこまれるたびに上へ上へと這い出てきて圧死だけは免れた二人は、ついに他のゴミと一緒にゴミ集積場に放り出されます。
ハリウッドの大スター、スティーブ・マックイーンがゴミ集積場でゴミと一緒にゴミ収集車からごろーん。
事件ですよこれは。
【ゲッタウェイ(1972)】でもっとも衝撃の名場面です。
この苦難を共に乗り越えたドクとキャロルの絆はますます深まり、体じゅうゴミだらけの二人は仲良く肩を寄せ合いながらメキシコを目指して再び歩き出すのでした。
それにしても一晩ゴミん中にいたからね。
ラストはもう美しいキャロルの髪もバッサバサですわな。臭うことができたとしたらかなりくっさいはず。狭いトラックの運転席に3人乗ったりしたら悪臭地獄ですよ。ああ、だからドク窓開けてるんか。
それでもいいじゃない。
ドクとキャロルが幸せならいいじゃない。
クライム系の映画でこんなラストって、かなりいいじゃない。
どうしようもない悪党とどうしようもないバカ女
意外とあっけなくドクにやっつけられちゃうけどそこに至るまでに「こんな猛獣みたいな奴に狙われたらたまったもんじゃないな…」と思わせる悪党ルディを演じたアル・レッティエリは、名画【ゴッドファーザー】でもドン・ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)襲撃事件を引き起こした麻薬密売人ソロッツォ役で存在感を放った強者です。
1972年/アメリカ/監督:フランシス・フォード・コッポラ/出演:マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェームズ・カーン、ロバート・デュバル、ジョン・カザール、タリア・シャイア、ダイアン・キートン、リチャード・カステラーノ、モーガナ[…]
そういえば奇しくも【ゲッタウェイ(1972)】と同年公開ですね【ゴッドファーザー】は。
アル・レッティエリ、実際に会ってみたらすっごい良い人なのかも知れないけど顔怖すぎ。
ダニー・トレホかアル・レッティエリかってくらいの悪役ヅラしてるよね。
1996年/アメリカ/監督:ロバート・ロドリゲス/出演:ジョージ・クルーニー、クエンティン・タランティーノ、ハーヴェイ・カイテル、ジュリエット・ルイス、アーネスト・リュー、サルマ・ハエック、ダニー・トレホ注※このサイトは映画[…]
しかし【ゲッタウェイ(1972)】にはこのアル・レッティエリの顔の怖さを凌駕するオツムの弱さを誇るバカ女(サリー・ストラザース)が登場しましてですね、2人の絡みはかなり笑わせてくれるんでご期待ください。
(笑うとこではないんじゃあ…)
映画【ゲッタウェイ(1972)】の感想一言
スティーブ・マックイーンは肺癌のため50歳の若さでこの世を去っています。
【ゲッタウェイ(1972)】を演じた時すでに42歳。この2年後に公開された【タワーリング・インフェルノ】を最後にしばらく隠棲してしまいます。
長らく好敵手と煽られてきたポール・ニューマンが83歳まで生きてくれたことを思うと、スティーブ・マックイーンの早すぎる死がますます悔やまれます。
1974年/アメリカ/監督:ジョン・ギラーミン/出演:ポール・ニューマン、スティーブ・マックイーン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、スーザン・ブレイクリー、リチャード・チェンバレン、O・J・シンプソン[…]
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